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共通語は北京語、台湾の複雑な言語事情 [言語・語学・通訳・翻訳]

共通語は北京語、台湾の複雑な言語事情
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2745269/6037578
2010年08月02日

【8月2日 AFP】子どもの頃から台湾語ではなく、北京語を話すよう強いられて育った台湾・国立東華大学(National Dong Hwa University)の政治学者、施正峰(Shih Cheng-feng)氏は、52歳になった今も不自由を感じている。

「人によっては、小学生レベルの台湾語しか話せない人もいます。学問で使うような単語は、使いたくても知らなかったりする。わたしたちは伝統的な価値観とか知恵といったものを失ってしまったのです」。共産党に中国本土を追われ台湾へ逃れた国民党政府の下で育った何百万という台湾人が、施氏と同じ境遇にある。

■言語環境がもたらす光と影

 台湾の言語環境は複雑な歴史をたどって今日に至り、その社会に光と影をもたらしている。

 利点は、北京語を話せることで、経済成長目覚ましい中国本土の13億人の中国国民と楽にコミュニケーションできるということだ。台北(Taipei)のシンクタンク、中央研究院(Academia Sinica)社会学研究所の汪宏倫 (Wang Horng-luen)博士は、中国とのビジネスにおいて台湾人は、広東語を主流言語とする香港人よりも圧倒的に有利だという。そればかりか「台湾人のほうが自分たちよりも北京語をちゃんと話せるという中国人は多い。中国は方言が多いので、みんな北京語は話せても訛りがとても強いからです」

 しかし2300万人の台湾の人びとは、北京語を話せる代わりに、何世紀も前からこの島に根付いてきた固有の言葉をあまり話せないという大きな代償を払っている。約300年前に中国本土から台湾に渡った移民たちがもたらした福建語が現在、台湾語とみなされる主流言語だ。ほかにはやはり中国本土から流入した客家語を話す人と、中国語とはまったく関係のないオーストロネシア語系を話す人口が合わせて数百万人いる。

■北京語教育の真の狙い

「統一言語によって国民の結束を強めるというふれこみで、北京語の強制は正当化されたが、そこには隠されていることがある。ある人びとをつぶそうとするならば、その人びとの歴史、文化、そして言語を奪ってしまえばよいということだ」と施氏は解く。

 1945年に日本が降伏すると、それまで50年間にわたって日本の植民地だった台湾を引き継いだのは、中国からやって来た国民党政府だった。彼らはすぐさま台湾の人びとの間に、国粋主義的な中国人意識を復活させようとした。

 北京語教育は経済的側面から正当化されるかもしれないが、真の狙いは政治的なものだと台北にある東呉大学(Soochow University)のジェニファー・ウェイ(Jennifer Wei)氏は指摘する。「1950~60年代にかけての強引な北京語化政策は、経済発展ばかりが目的だったわけではない。むしろ台湾人に対する統制を強化する試みだったのだ。国民党が経済発展だけを目指していたのならば、日本語を禁止にはしなかったはずだ」

 豪モナッシュ大学(Monash University)の台湾研究者、ブルース・ジェイコブス(Bruce Jacobs)氏は「インドにおける英語、アルジェリアにおけるフランス語と同様、植民国のナショナリストによる(植民地に対する)言語の押しつけだ」と批判する。

■北京語の使用が台湾人のアイデンティティ形成に貢献

 しかし、中国人としての意識をもたせようという当初の国民党の狙いとは逆説的に台湾では、本来の台湾語ではない北京語の使用が、台湾人としてのアイデンティティ形成に貢献するという現象が生じた。

 その理由について汪氏は、学校教育で台湾人全員が学ぶ北京語以外に、共通言語がないからだという。「台湾で話され、読み書きされる北京語は、中国本土の北京語とはだいぶ違う。今や台湾人が自分たちと中国本土の人間とを区別するとき、言葉こそが文化の差を表しているのです」
(c)AFP/Peter Harmsen
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