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東大の中国語履修者~7ヶ国語の中から選んだ理由とは~ [中国語教育の動態]

東大の中国語履修者~7ヶ国語の中から選んだ理由とは~
(執筆者:伊藤徳也 東京大学大学院准教授)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0419&f=column_0419_001.shtml
サーチナ【コラム】 2010/04/19(月)

  東大は、学生に既習外国語と未習外国語二つの外国語を、必修科目として課している。今年度開講されているのは、英、独、仏、中、西、露、朝、伊の8言語。そのうちイタリア語は文系だけで理系には開講されていない。毎年3000名を越える新入生を迎えるが、ほぼすべての学生が、既習外国語として英語を選び、もう一つの未習外国語を他の言語の中から選んでいる。

  今年度の新入生は3100名少しで、若干の調節を経た後確定した未習外国語の履修者数が、

独:884名
中:855名(昨年度は803名)
仏:616名
西:559名・・・

  という結果になった。(数字は上位4ヶ国語のみ)このうち上位3ヶ国語は、さらに既習外国語として選んだ学生が33名いる。そのうち15名が中国語だ。それも含めれば、中国語履修者は計870名、全新入生の約27%ということになる。

  このような情勢はおおまかには、90年代半ば以降ほぼ常態となっている。日本の各大学で中国語履修者が激増したのは90年代半ばのことのようで、それは東大でも同じだった。東大では93年から96年にかけて、373→637→747→897と中国語履修者数が推移したが、特に93年度から94年度にかけては倍近い増え方をしていて驚異的だ。

  さて、昨年度、今年度と、未習外国語として中国語を選んだ学生の一部に、共通のエントリーシートを記入してもらったので、それに基づいて、最近の中国語履修者に対する私の印象を、ざっくりと書きとめておきたい。

  中国語を7ヶ国語の中から選んだ理由としては、将来役に立ちそうだと積極的に考える学生が圧倒的に多く、簡単そうだとか外国語としては漢字表記なので楽そう、という消極的な理由は、予想外に少ない。周囲に中国人がいたとか個人的ななじみがあったから、家族に薦められたから、といった理由も散見される。

  同時に中国という国家、中国人という国民に対する印象を尋ね、それが外国語の選択に影響したかどうかを聞いたら、本人たちの意識としては、両者の相関関係はあまり高くないらしい。つまり、中国や中国人に対する印象の良し悪しに関わらず、役立ちそうだから中国語を選んだという学生が比較的多いということだ。

  中国、中国人に対する印象だが、これは千差万別で、悪い人もいれば良い人もいる。あからさまに中国に対する嫌悪を記した学生が、ごく少数ながらいた。その一方で、中国を嫌悪する人やマスコミの中国に対する取り上げ方に対して、疑問や反発を記した学生も、やはり同じくらい存在する。

  それはともかく、今回改めて確認したことは、中国政府、中国人に対する好悪をまったく超越して、「三国志」が好きという学生が中国語履修者の中には少なからず存在するということだ。この点は、私が東大に赴任してからずっと10数年間、一貫して変わらない
ように思う。以前は男子だけだったが、いつごろからか男女を問わなくなった。これはいわゆる「歴女」出現の筋から考えると一応の納得はできる。

  ただし、彼らにとっての「三国志」が古典の「三国志演義」とどれくらい同じで、どれくらい違うのか、それはわからない。史書「三国志」とは当然違うにしても、「蒼天航路」が好きと書く学生もいて、そのあたり底が知れない。もしかしたら、最近の学生が好きな関羽は、最近のビデオゲームに出てくるカラフルな装いの少女なのかもしれない。「関羽」という名の、瞳の大きい童顔の、細い足がすらりと長い、「美少女」――関羽も今や変幻自在に加工できる魅力的なポストモダンの「キャラクター」だ。

  このあたり今度学生によく聞いてみたい。(執筆者:伊藤徳也 東京大学大学院准教授)

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