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「自分たちでなく、上の、中央の権威を借りて解決する体質が東アジア全体にある」 [中国の社会・文化・歴史]

「おかみ」を無条件に偉いものだと思う感じかた、確かに小さいころから持っていたような気がする。
どうしてその心性を獲得したのだろう。
昔話を読んでいたからだろうか。
それこそ水戸黄門の影響だろうか。暴れん坊将軍とか、遠山の金さんとかだろうか。

その「体質」が韓国にも中国にもあるのだそうだ。
それは東アジアのみに特有なのだろうか。
ハリウッド映画で大統領が出てくると、たいていその人間くさい一面にスポットが当たっていて、印籠の権威のようなものはあえて無視されている。
そういう茶化しかたが東アジアで許されるとすれば、中国なら蒋介石だったり溥儀だったりと、正統でないという烙印を押されている者に限られるかもしれない。日本で言えば誰だろう?

「水戸黄門=危険な話」の観点に感心して、東アジアの「体質」の指摘に動揺してしまった。自分にもある種のステレオタイプな心性が染み付いているのだな、と。


「ニッポン人脈記 黄門は旅ゆく 10 権力?救済?終わらぬ旅」より
(朝日新聞2009年11月24日)
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 映画評論家、佐藤忠男は、79歳の今まで130に近い国の映画を見てきた。こだわったのは、日本人の精神のあり方だった。(中略)
 佐藤は、弱い下の者が強い上の者に意地を張る時代劇に魅力を感じ、研究してきた。だが、水戸黄門は「別の権威の尻馬に乗ったもの。子どものころ喝采したのがいまいましかった」と著書「意地の美学」で語る。
 映画評論の世界で大御所となった佐藤は、いま黄門像をこう分析する。「つきつめれば天皇制です。非常に人がよく、愛すべき人だけど、印籠さえ出せばみんな平伏するというような。その人が笑うとあらゆる対立は全部解消されてしまう。実際にはいない理想像です。保守思想の最後の砦です」

 京都大学人文科学研究所の教授、金文京(57)は、水戸黄門の印籠と同じような存在が韓国と中国に存在することに気がつき、趣味で調べ本にした。
 東京生まれ、在日韓国人2世の金は、小さいころから家で韓国の文化に触れてきた。印籠と同じように平伏させる道具を持つ暗行御史(あんこうぎょし)が、諸国を回る話を知っていた。
 三国志が好きで、慶応大学で中国文学を専攻し、京大大学院へ。研究するうち、水戸黄門と同じく身分を隠して諸国をめぐる存在が中国でも古来あったことに気がつく。
 「中国でも韓国でも似た話なのに、お互いに全く知らない。その源は何だろうと調べたら深みにはまって」
 各地方に残る黄門の伝承を求めて、東北地方や東京・新宿コマ劇場などに何度も足を運び、しつこく調べた。
 「自分たちでなく、上の、中央の権威を借りて解決する体質が東アジア全体にある。中央集権的な官僚体制の体質です。最高権力者は自分たちのことを理解しているはずだと。周りの人間が悪い、天皇や皇帝は悪くない、と」
 金は言う。「水戸黄門はたまたまいい人だから万事解決ですが、本質的には危険な話です。日本人はそれにあまり気づいていない」

(後略)
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金文京氏の水戸黄門研究書はおそらくこれ↓

水戸黄門「漫遊」考

水戸黄門「漫遊」考

  • 作者: 金 海南
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 1999/01
  • メディア: 単行本



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